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ホームイベントシンポジウム RIETI-ANUシンポジウム 多国間ルールに基づく経済秩序を確保するためのアジアの課題(議事概要) 印刷 開催案内 動画配信 議事概要 イベント概要 日時:2023年9月22日(金)14:00-16:00(JST) 主催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)/オーストラリア国立大学(ANU) 議事概要 東アジアは政治的にも経済的にも常にダイナミックな地域であった。アジア地域における東アジアの重要性が増し、世界全体に及ぼす影響力が高まる中、すべての関係者が協力し、現在そして将来の大きな課題に立ち向かう必要がある。その課題の1つが、多国間ルールに基づく経済秩序の確保である。このような体制の維持と強化に東南アジア諸国連合(ASEAN)やアジア太平洋経済協力(APEC)などの地域パートナーシップや地域機構はどういう役割を果たせるであろうか。地域的な包括的経済連携(RCEP)や環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)のような既存の協定からどのような教訓が得られるであろうか。また、リスク回避、経済的威圧、米中の戦略的競争といった現在の問題にどうすれば対処できるであろうか。 RIETIとANUが共催する本シンポジウムでは、「多国間ルールに基づく経済秩序を確保するためのアジアの課題」をテーマに、前述した課題について討論し、タイムリーな質問に答えることを試みる。プログラムは、日本の経済産業省高官による基調講演、次に地域の政策、経済、安全保障、協力に関して実務経験があり、研究にも携わってきた5人の専門家によるパネルディスカッションへと続く。 開会挨拶 浦田秀次郎―RIETI理事長/早稲田大学名誉教授/東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)シニア・リサーチ・アドバイザー 東アジアは、世界経済成長と国際的な経済相互依存の中心として存在し、世界貿易機関(WTO)やアジア太平洋経済協力(APEC)などの国際的組織によって編成されたルールに基づく経済秩序から多大な恩恵を受けてきました。しかし、東アジアは今、地政学的・経済的亀裂に悩まされており、その秩序が崩壊すれば、深刻な影響を受ける地域でもあります。 本日、私たちは重要かつ困難な問題を熟考するために参集いたしました。東アジア諸国は自由で開かれた貿易環境を維持するためにどのように協力するべきでしょうか。東南アジア諸国連合(ASEAN)やAPECに最もふさわしい役割は何でしょうか。日本やオーストラリアをはじめ、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)加盟国は、中国や台湾の加盟申請にどう対応すべきでしょうか。経済的威圧に対抗し、地政学的リスクを軽減するために、どのような戦略を採用できるでしょうか。本日のシンポジウムは、このような差し迫った問題に向き合い、アジア地域の参加者の知恵を結集して、今後の政策の指針を見出すことを目的としています。 基調講演 吉田泰彦―RIETIコンサルティングフェロー/経済産業省通商政策局通商交渉官 インド太平洋地域では、政治的にも経済的にも大きな分断があり、サプライチェーンに関連するさまざまなリスクやグローバリゼーションに伴う諸問題が生じています。(特に)貿易、投資、技術、情報の分野での競争が激化しています。地域経済に大きな影響を及ぼす国際政治情勢は極めて不透明であり、ASEANの中心性と一体性が今や議論の主題となり、域内の貿易秩序は試練にさらされています。 2023年10月に大阪で開催される主要7カ国(G7)貿易大臣会合では、WTOを軸にしたルールに基づく国際貿易秩序を維持し、発展させる方法が議論されます。経済安全保障を確保するためには、グローバルサプライチェーンを強化し、強靭性を高めて、経済的威圧による一方的な現状変更の試みに対抗する必要があります。2023年5月のG7広島サミットでは、経済的威圧に協力して対抗していくという非常に強いメッセージが打ち出され、「強靭で信頼性のあるサプライチェーンに関する原則」が新たに発表されました。G7として、私たちは、すべての国にこの原則を支持することを奨励します。 こうした状況を踏まえると、有志の国々の国際経済協力は今後ますます重要になるでしょう。2022年に発足したインド太平洋経済枠組み(IPEF)は、貿易、サプライチェーン、クリーン経済、公正な経済という4つの柱を軸として、域内の経済協力を議論するための枠組みです。これは、サプライチェーンの混乱時に協力するための具体的な手続きを定めた初の多国間協定です。CPTPPと地域的な包括的経済連携(RCEP)協定は、どちらもASEANを含めた自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)のネットワークです。これら枠組みが、地域の経済的な一体性を高めることを期待しています。 2023年は「日本ASEAN友好協力50周年」に当たります。総人口8億人の市場において、私たちは、過去50年間にわたって築き上げた信頼を基に、これからの50年もイノベーションを共創し、共に成長することを目指します。このほど、多様性・包摂性を両立するサステナビリティの実現、国境を越えたオープンイノベーションの推進、サイバー・フィジカルコネクティビティの強化、活力ある人的資本を共創するためのエコシステムの構築、という4つの柱からなる「日ASEAN経済共創ビジョン」の最終版が発表されました。このビジョンを実現するためのアクションプランも策定され、現在、日本とASEAN諸国は具体的な共創案件の実現に向けて協力しています。 さらに、先頃、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)デジタル・イノベーション・サステナブル・エコノミー・センター(E-DISC)も発足しました。このセンターを拠点に、産官学の人的ネットワークを強化するとともに、日本主導のエネルギーに関するイニシアティブであるアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の実現に向けて、脱炭素、データ利活用、サーキュラーエコノミーの調査研究を進めていきます。 自由貿易を促進し、経済安全保障を確保するためには、IPEF、CPTPP、RCEPという3つの枠組みをすべて推進し、発展させなければなりません。世界とアジア地域の不確実性の高い今後を考えると、二国間ではなく、地域単位で行うことが重要です。 パネルディスカッション シロー・アームストロング(Shiro ARMSTRONG)―RIETI客員研究員/オーストラリア国立大学(ANU)クロフォード公共政策大学院准教授/豪日研究センター(AJRC)長/東アジア経済研究所(EABER)長 アームストロング: 今回このテーマを選んだ理由は、この地域には深い相互依存関係と世界のどこよりも経済秩序に基づいた開かれたルールに依存する複雑なサプライチェーンがあるからです。それだけに、このシステムが崩壊すれば、世界のどの地域よりも経済的ダメージを受けるでしょう。本パネルディスカッションでは、地域経済と多国間体制の主要な課題について考えていきたいと思います。 講演1 レベッカ・ファティマ・サンタマリア(Rebecca Fatima STA MARIA)―APEC事務局局長 ASEANの中心性の概念は、ASEAN憲章に記述されています。憲章は、加盟国に対して、開放的で透明性が高く、包摂的な地域アーキテクチャーの中で対外的パートナーとの関係と協力を推進する主要な原動力として、ASEANの中心性と積極的な役割を維持するよう求めています。 政治的に見れば、ASEANは主権、平等、領土保全、コンセンサス、一体性の原則を重視し、多かれ少なかれ「中心性」を維持してきましたが、人権を侵害する加盟国に対して、もっと断固として対処すべきだという批判が事あるごとに出てきます。同様に、経済面でもRCEPにおいて指導的役割を果たしてきましたが、WTOでの発言力の弱さに見られるように、「積極的」という点ではあまり印象が残らないと言わざるをえません。 ASEAN加盟国が異なる発展段階にあることを踏まえると、ASEANの中心性とは、グループ内の相互支援を意味します。ASEAN統合イニシアティブ(IAI)は、公平な発展を支援し、開発格差を縮小するために導入されましたが、これまでの効果のほどについては私には分かりかねます。それでもなお、ASEANは集団的立場で地域の平和と安定のために地域対話プラットフォームであることが期待されています。そのような意味において、ASEANは重要です。 それは数字が証明しています。ASEANは世界人口の約10%を擁し、世界の国内総生産(GDP)の3.7%を占めています。グリーンフィールド海外直接投資(FDI)ではすでに中国を追い抜き、多くの分野で重要な役割を担っており、ほかの経済圏と比較して、総輸出額に占める海外付加価値額の割合は極めて高くなっています。 こうした発展を背景に、ASEANの関心は自由で開かれた地域の維持にありますが、ASEANはそれ以上のことができます。政治・安全保障共同体(APSC)、ASEAN経済共同体(AEC)、ASEAN社会・文化共同体(ASCC)という3つの「共同体」の対話を強化し、「ASEAN共同体」を実現するために構造的な変化が必要です。これによって、ASEANは国際舞台でよりまとまりのある発言力を形成し、ASEANの中心性の重要性を強調することができるでしょう。 講演2 国松麻季(KUNIMATSU Maki)―中央大学国際経営学部教授・国際センター副所長 今日、ASEANは、エネルギー転換、サプライチェーン、デジタル化、環境問題、経済統合などの分野でさまざまな課題に直面しています。機能や加盟国の違いに注意を払いながら、すべての経済枠組みを重層的に活用していくことが重要です。中でも、WTOとFTAは、多国間のルール志向の経済秩序を維持するための礎です。両者の機能を持続させるためには、ルールづくり、モニタリング、紛争解決、協力といった4 つの要素が欠かせません。 交渉による新たなルール形成については、ドーハ開発アジェンダ(ドーハラウンド)が暗礁に乗り上げて以来、WTOがあまり機能していないのが実情です。しかしCPTPPやIPEFでは、デジタル、環境、労働に対する新たな経済ルールの策定が期待されています。 紛争解決については、WTO上級委員会が2019年にその機能を停止しました。この状況を踏まえ、翌年、一部の加盟国が多数国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA)を立ち上げました。オーストラリア、中国、日本はすでに参加国ですが、ASEANからはシンガポールのみです。ASEAN加盟国に参加を促すことは有益でしょう。さらに、FTAに基づく紛争解決の活用も検討すべきです。 既存ルールの適用を管理および監視することは、2010年以降増加している経済的威圧に影響を及ぼします。経済的威圧や安全保障に関する措置は、WTO協定のルールに則って厳密に監視すべきであり、対抗措置も常にルールに則ったものであるべきです。また、FTAルールの活用も有効な選択肢です。可能な限り、ルールに則って手続きを行うことが望ましいと言えます。 最後に、国際協力にはさまざまな側面と目的がありますが、貿易協定に基づく協力は、ルールに基づく経済秩序を強化するものと認識すべきです。その上で、より包摂的で多様な協力の形を模索するために個別の対話を通じてアップグレードすることが必要です。 講演3 ワン・ドン(WANG Dong)―北京大学中外人文交流研究基地(iGCU)教授・執行主任 世界銀行によると、2013年から2021年まで、世界の経済成長に対する中国の平均寄与率は38.6%となり、G7諸国の合計を上回っていました。また、2008年から2021年まで、世界の1人当たりGDPが30%増加したのに対し、中国の1人当たりGDPは263%増加し、中国は世界全体の経済成長の40%以上を占めていました。ブルームバーグの統計によると、2028年までの世界のGDP拡大に占める中国の割合は、22.6%になると予想されています。 世界の経済成長の75%は20カ国に集中し、その半分以上は中国、インド、米国、インドネシアに集中すると予想されています。アジア太平洋地域の今年の成長率は4.6%まで加速すると予測されており、主な推進要因の1つは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以後の中国の経済再開です。国際通貨基金(IMF)によると、中国経済が1%成長すると、中国に関係する経済が0.3%成長します。 中国経済はアジア経済と密接に結びついています。2013年、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を提案し、AIIBは現在、世界銀行に次ぐ第2位の開発銀行です。中国が加盟するRCEPは現在、世界人口の47.4%、世界GDPの32.2%、世界貿易量の約29.1%を占め、史上最大の貿易圏となっています。 近年、「脱グローバリゼーション」の時代を迎えていると考える人もいますが、「再グローバリゼーション」という新たな段階を迎えているというのが私の主張です。さまざまな当事者がグローバリゼーションのダイナミクスを再構築しようと取り組んでおり、私はこれをグローバリゼーションのアップグレードと再構築、と定義します。 先頃、南アフリカで開催されたBRICS首脳会議で習主席が語った言葉を引用して締めくくりたいと思います。「中国に『皆が強みを持ち寄れば勝てる。皆で知恵を出し合えば成功する』という格言があります。今後も発展を分かち合う共同体を築くために力を尽くし、団結していきましょう。そして、グローバルな近代化の過程において、どの国も取り残されないようにしましょう」 講演4 グエン・アイン・ズオン(NGUYEN Anh Duong)―中央経済管理研究所(CIEM)総合研究部長 ASEANはチャンスと課題が入り混じった状況にあり、それぞれの程度は不確実です。ASEANは米中デカップリングを背景に投資シフトに直面しています。2022年と2023年に重要イベントの開催を成功させたことで、ASEANの役割が大きくなっていることは国際社会からも認められています。さらに、RCEPに続いて、現在いくつかのASEANプラスワンFTAの格上げ交渉も行われています。 さまざまなステークホルダーから、第12回WTO閣僚会議、RCEPおよびIPEFの閣僚級会合はいずれも本質を欠いているという声が上がりました。しかしながら、私は、不確実性と不信の厳しい時期を経て、一堂に会す機会をもたらすのがWTO、RCEP、IPEFであり、一緒に話し合いの席に着くことが最初の重要なステップであると考えています。 このような状況を踏まえて、ASEANの中心性を推進していかなければなりません。第一に、ASEAN統合をより的確で有意義なものにするためにASEAN事務局の能力を強化する必要があります。第二に、海外投資の誘致に向けた協力が必要です。第三に、さまざまな取り決めにおいてASEANの視点を育む必要があります。最後に、ASEANは対話のプラットフォームを提供し、経済問題にとどまらず、具体的な取り組みで超大国と協力する必要があります。 これらに基づいた上で、状況に応じてデリスキング(リスク低減)に対応できるのではないかと思います。まず、関係国すべてに核となる経済的利益を確保し、域内FTAの過去の経験から学び、海外投資家と関わっていく必要があります。さらに、連携して協力のための新しいアイデアを生み出し、協力の重要な分野として構造改革について考え、比較的新しい分野で具体的な取り組みを始めることも可能でしょう。そして最後に、対話を促進し、つながりを構築するためにシンクタンクが果たす新たな役割についても検討すべきです。 結論として、デリスキングと経済的威圧に対処するために、私たちは多角的貿易システムの一員となる必要があります。その際、多国間主義のマインドセットを維持しながら、ルールを尊重することはもちろん、ルールづくりにも貢献しなければなりません。 講演5 リリ・ヤン・イング(Lili Yan ING)―東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)リードアドバイザー(東南アジア地域)/国際経済学協会(IEA)事務局長 この5年間、米中間の緊張、コロナ禍、最近のウクライナ紛争などが相次ぎ、サプライチェーンにかつてないほど大きな圧力がかかっています。それにもかかわらず、ASEAN諸国は相対的に好調で、昨年は有効な政策と幸運が重なったこともあり5.6%の経済成長を記録しました。 「有効な政策」という観点から言えば、過去20年間、ASEAN経済は、債務残高の対GDP比が60%と比較的妥当であり、財政赤字の対GDP比も1.9%と低い水準でした。「幸運」という観点に目を向けると、過去3年間、ASEAN諸国は貿易黒字と輸出の大幅な増加を記録しました。しかしこれは、コモディティ価格の上昇が主な要因であり、必ずしも付加価値によるものではありませんでした。 ASEANは、東アジア諸国と同様に、グローバリゼーションの恩恵を受けています。だからこそASEANと加盟国が多角的貿易システムを強化することが極めて重要です。そのためには、まず、気候変動やデジタル化に関連する問題も含め、そのシステムが正しく機能する必要があります。また、開かれた公正な貿易・投資政策を維持し、一方的な制裁措置を禁じ、東アジア域内の貿易・投資を改善し、パートナーとの協力を強化する必要があります。 さらに、ロジスティクスと海事インフラの開発、アップグレード、近代化、脱炭素化に投資し、サプライチェーンのレジリエンス(強靭性)を高める必要があります。現在、世界規模の貿易の90%が海上輸送されているため、これは特に重要です。 最後に、すでにデジタルトランスフォーメーション(DX)の時代を迎えているため、好むと好まざるとにかかわらず、DXに投資する必要があります。サプライチェーンにおけるデジタル技術の利用を最適化し、デジタル化されたサプライチェーンへの企業の参加を促進し、物理的インフラ、デジタルインフラの両方を改善することが重要です。 Q&A アームストロング: どのようにして経済的強制力に対抗し、経済兵器の使用に制限を設けることができるのでしょうか。また米中間の戦略的競争でこの地域の利益が損なわれないようにするにはどうすればよいでしょうか。反威圧措置はWTOの既存の体制を弱体化させるでしょうか、それとも体制に矛盾しない抑止力として機能するでしょうか。このような措置が、日本、米国、オーストラリア、その他の国々に対して発動されることはあり得るでしょうか。 サンタマリア: 経済的威圧への対抗措置を取ろうとするなら、まず「経済的威圧」とは何かを定義しなければならないと思います。私の第一の行動方針は常にWTOであり、そのうえで何を達成したいのかを明確にすることです。政治抜きに考えてみること、また対抗措置の経済性、貿易や投資に及ぼす影響に目を向けることも大変重要だと思います。そして、いったん外から状況を見て、状況がどうなっていくのかを確認してから、データに立ち返り、WTOのルールを強化することが重要です。中間経済圏に目を向ければ、ASEANの役割は明らかです。結局のところ、自分の行いは自分に返ってくるわけですから、私ならどういうアプローチでこの件に当たるかは慎重になります。 イング: デカップリング、デリスキング、フレンドショアリングは非効率性を高め、消費者にとって価格上昇につながると思います。反威圧連合については、共通の懸念を考えなければなりません。例えば、G7が反威圧連合を提言し、共通の懸念を念頭に置いているなら、しばしG7以外の国々の視点に立って考えてみましょう。このような行動や定義は、貿易相手としての信頼を失墜させて逆効果になりかねません。ですから、日本、韓国、オーストラリア、ASEAN諸国のようなミドルパワー国は、これ以上一方的な制裁措置がないように協力し、開かれた公正な多角的貿易システムの強化に注力すべきです。 ワン: この概念を科学的なものにするには、明確かつ科学的な方法で定義することが極めて重要だと思います。あまり広義にすると、偽善につながる恐れがあります。選択バイアスという問題もあると思います。中国がよく引き合いに出されますが、米国が経済的威圧を行使した事例も何千とあります。さらに、この概念を政治的に利用したり、特定の国を名指ししたり、特定の政策を非難したりするための政治的レトリックとして利用しないことも重要です。それは協力と相互理解の精神に反します。 アームストロング: 政治的動機によるものであろうとなかろうと、一方的な制裁や保護貿易主義的な措置を受けた場合、各国はどうすべきでしょうか。 国松: すべてWTOとFTAのルールによって対処すべきです。経済的威圧について言えば、学問的な観点や政治的な観点に加えて、最も影響を受けるビジネスの観点からも考えることが必要だと思います。 ワン: 多角的貿易システムのルールに従って行動することが必要だと思います。何よりもまず、どの国のどの政策立案者であっても、最優先にすべきは、WTOの貿易紛争解決制度を再構築し、復活させることです。 アームストロング: グローバリゼーションから取り残された人への補償についてはどうお考えでしょうか。 グエン: ベトナムでは、経済統合の戦略を策定したときに、経済統合のプロセスに国内のコンセンサスと能力開発を含めました。ASEANのFTAの大きな特徴の1つは、より先進的なパートナーが発展途上国に支援や技術援助を提供する開発協力です。それは共に成長し、ウィンウィンの関係を築くことでもあります。能力開発を重視するだけでなく、ステークホルダーをプロセスに参加させることにも注意を払っています。 サンタマリア: われわれはFTAを結んでいますが、そのプロセスで何をやっているのか、強く意識しなければなりません。敗者について語る時、エンゲージメントを考慮することが重要です。APECやASEANのやっていることは大企業のためのものだと思われがちですが、どのFTAでも、中小企業(SME)の発展と支援がますます強く意識されるようになっている。FTAが万能薬ではないことを受け入れなければなりません。この点では、ビジネスの円滑化と構造改革はどちらも重要です。経済統合で負け組が出ないようにするためには、環境影響評価と社会的影響評価、両方を考慮に入れたFDIの誘致を徹底しなければなりません。 アームストロング: 日本はどうすれば経済安全保障と自由貿易秩序の両立を保てるでしょうか。私たちは皆の生活が苦しくなる底辺への競争に向かっているのではないでしょうか。どう対応すべきでしょうか。 国松: バランスの意味合いがとても難しいと思います。経済的なバランスなのか、政治的、あるいは哲学的な意味でのバランスなのか? とはいえ、日本の経済安全保障推進法はWTOとの整合性が非常に高い法律です。補助金については、WTOの補助金及び相殺措置に関する協定がありますが、まだ解釈が不十分ですので、議論を重ねてルールを練り上げるべきです。 グエン: かつて日本とベトナムは共同で工業化戦略に取り組みました。これはベトナムの現実的なニーズと海外投資家の関心に基づくものでした。日本の大使館と投資家たちがベトナムのステークホルダーや政策立案者たちと同席したのは初めてのことでした。その過程で、まず重要だったのは、産業政策立案における能力開発でした。次に、投資家の利益とサプライチェーンのレジリエンスの両方を守るための取り組みとなるよう、各方面を確認しながら、域内諸国の信頼を培うことでした。 ワン: 国際関係に「安全保障化」という概念があります。ともすれば政策立案者は踏み込み過ぎて「過剰な安全保障化」に陥ります。多くの国が経済安全保障をますます重視する一方で、安全保障という考え方と多角的貿易システムのバランスを取る方法については、もっと理論的な研究が必要だと思います。さらに言えば、各国の産業政策における政策行動を規制するメカニズムやルールの設計という面でWTOは不十分ではないかと考えています。その意味では、合法な産業政策と非合法な産業政策を区別することで、WTOに基づき、メカニズムやルールを改善したり、交渉したりすることができます。産業政策を規制するWTOルールがないため、どの国も「底辺への競争」に陥る危険があります。まずは理論的に考えることから始めれば、政策に移行する方法が見えてきます。 サンタマリア: WTOはまとまりのない存在ではありません。私たちこそがWTOなのです。自分がルールの決定や修正に手を貸せる場所にいなくても、それは組織のせいではありません。ASEANにとって残念なことに、対話は3つの柱(共同体)に限られています。貿易の自由化やグローバリゼーションについて語るとき、政治的安全保障の組織が経済の組織と話し合えるような共同体を越えた対話はありません。だからこそ、WTO、ASEAN、APECは実効性がないという印象を受けるのです。従って、私たちは組織内の役割や構造を変える必要があると同時に、考え方を変える必要があります。 アームストロング: 安全保障上の必要性は米中間の技術的なデカップリングにつながり、他国もこの試みに自発的に参加したり、参加するよう圧力をかけられたりしています。しかし、その代償は果たしてどれくらいなのでしょうか。地域的にも世界的にも米中が協力の枠組みを見出せる問題があるとすれば、それは気候変動なのでしょうか。 イング: 気候変動やデジタルトランスフォーメーションはグローバルな取り組みが必要な問題ですから、米中の協調が重要だと思います。一方で、多極化する世界において、ミドルパワー諸国の役割も重要だと思います。米中デカップリング戦略に足を引っ張られないようにしましょう。超大国にはそれぞれの利害と課題があります。ミドルパワーは、一方を支持するのではなく、力を結集して、真に重要な問題の解決と多国間システムの強化に焦点を当てることが重要です。 ワン: 莫大な代償を払うことになり、ますます持続不可能になってきていると思います。ミドルパワー諸国とどちらか一方に加担することについては、国際社会にそれを強いることは最後の手段である、ということです。理屈では、バランスを取ることができるなら、それが最も理想的ですが、現実の政策では、たちまち行き過ぎてしまい、逆効果になる危険性が多々あります。 グエン: 経済規模が小さい国ほど懸念していると思います。デジタルトランスフォーメーションとグリーン経済への移行が必要であることは誰しも認めていますが、そのプロセスの基準をめぐる懸念もあります。基準の選択はどちらか一方の選択とも見なせるからです。また、国際協力にとって好ましいマインドセットを維持する必要があります。状況が変わり、プレーヤーが変わる可能性があるからです。最後に付け加えると、デジタル経済連携協定(DEPA)のような緩やかな手段から着手する中所得経済が広がっています。 総括 シロー・アームストロング(Shiro ARMSTRONG)―RIETI客員研究員/オーストラリア国立大学(ANU)クロフォード公共政策大学院准教授/豪日研究センター(AJRC)長/東アジア経済研究所(EABER)長 さまざまな「集合体」がある世界に移行しているようです。これらの集合体がオープンで、多国間システムに貢献するものであるようにしなければなりません。ASEANが声を1つにして発言することが重要だと思います。小国が競争に生き残るには、平等な待遇の上に成り立つ多国間ルールに基づく秩序が必要です。WTOとMPIAに関しては、ASEAN加盟国が参加して、ルールのために立ち上がる必要があります。だからこそ、この地域のリーダーシップが必要だと思います。 デリスキングについて言えば、多国間ルールに基づく体制の下でリスクが軽減され、管理されてきた期間がほんとうに長い間続きました。今、多国間ルールがない新しい分野では、あらゆるリスクを共同で管理し、軽減しなければ、デリスキングがデカップリングに変わり、米中間だけでなく、アジア地域に大きな亀裂が生じるでしょう。総合的に、各国が多国間システムのために立ち上がり、実際に何か行動を起こすことが求められているのだと思います。 イベント シンポジウム ワークショップ BBLセミナー 終了したセミナーシリーズ 情報発信 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